はじめから、出来たわけじゃあ、ありません!

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福田 忠雄氏。

福井県指定無形文化財 “墨流し” 保持者・伝統工芸士。

この度、縁あって、福田さんの“墨流し”の作業風景を
いろいろなお話を交えながら、じっくりと収める機会に恵まれましたので
その模様をお伝えいたします。

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↑これが“墨流し”の技法によって出来る、えも言われぬマーブル模様であります。

福田さんのお宅の屋号は

サスケ

です。
猿飛佐助との関係は恐らく全く無いと思われますが、
福田さんが“墨流し”によって織り成す模様は、まさに変幻自在です。

“墨流し”の技術は、昔から福田家に伝わっていたものではなく、
今年80歳になる福田さんが、

「ゼロから身につけた」

技術であります。
福田さんが生まれる前から手漉き和紙の生産を生業としていた福田家において

「今までと同じことをやっていても厳しい」

と判断した福田さんが、試行錯誤の中でなんとか確立していったものだそうです。
福田さんの奥さんは旧今立町の隣の

「武生市」

からやって来たのですが、当時は、それだけで

「あそこは潰れてまうわ」

と近所で囁かれたそうです。
なので福田さんの“墨流し”には当初、地元の人たちは
かなり否定的な捉え方をしていたみたいです。

それでも、そんな状況をひっくり返し
段々と“墨流し”が定着してくると、
恐ろしいことに、今度は地元の人たちの中から
“墨流し”を真似する人が出てきて、
それに加えてその二番煎じの“墨流し”は
時間が経つと、

「模様が消えてしまう」

という致命的な欠陥を抱えていて、
それによって、本家の福田さんも

「大打撃」

を受けた過去があるそうです。

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それでもどっこい
現在まで脈々と続いてきた福田さんの“墨流し”なので
何とも言われぬ含蓄があるのも当然なのです。

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ちょっとリキみ過ぎて、
前フリがやや長くなってしまいました…。

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というわけで、ここが越前市大滝町にございます、
福田さんの工房でありまして、扉を開けると

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こんな感じで福田さんが仕事中でありました。

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これが福田さんオリジナルブレンドの
“墨流し”用染料であります。
現在では入手が困難になってきている色もあるそうです。

そして、

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これが長い時間を経て確立された、
福田さんの“墨流し”の基本フォーム。

三刀流のロロノア・ゾロもビックリです。
左手には3本のそれぞれ異なる色のついた筆を、
右手には1本、松ヤニのついた筆を持ちまして、

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こういったスタイルで模様を描いていくのです。

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染料のついた筆を水につけ、ま〜るく色が広がってきたところで、

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円の中心に松ヤニのついた筆をつけると、
松ヤニが染料をはじいて同心円状に広がります。

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これをリズミカルに繰り返すことで、何重もの折り重なった円が出来ます。
そしてそれに、

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「フー、フー、」

と息を吹きかけたり、

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扇子をパタパタすることで、

「一度しか出来ない模様」

を作るのです。そして、

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↑福田さんが自ら漉いた、吸水性に優れ、
尚かつ破れにくい手透きの和紙を

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出来上がった模様の上にすっぽりかぶせて、

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和紙に模様を写し取るのです。それを

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鉄板で丁寧に乾かしましたら

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出来上がりという寸法でございます。

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福田さんの工房には、賞状や写真などがところ狭しと飾られていました。
昭和55年に、現在の

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天皇皇后両陛下が福田さんの工房を訪れた時の写真を筆頭に、

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無形文化財に認定された時の記念のパネルや、

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宮中にて勲章を授与された時の写真など、
栄えあるものばかりでありました。

最後に福田さんに

「撮った写真をインターネットで公開してもいいですか?」

と尋ねると、福田さん夫妻の表情が、ほんの一瞬曇りました。

よくよく聞いてみると、
以前インターネットに情報を公開したことによって、
直接、福田さん宅に電話がかかってきて

「気軽に根掘り葉掘り」

墨流しのことについて質問を受ける機会が
相当に増えたという事実があったそうです。

人としても伝統工芸士としても、

「聞かれたことには誠意を持って応えたい」

と思うのだが、なにぶん手作業の仕事なので、
質問に答えている時は

「手が止まってしまう」

とおっしゃっていました。

一枚一枚の紙を売ることが福田さんの

「生活の糧」

であることに真剣に理解を求めておられました。

そういった姿が私の目には

「人間が培ってきた経験に
もう少し敬意を払ってもいいのではないか?!」

と訴えていらっしゃるように映った次第であり、
私自身としても、いろいろと考えさせられました。

この行程を担当する職人達!

プレドラグ ミチビッチ

Predrag Michivic

Mr. Michivic

国際的なサッカー選手プレドラグ・ミヤトビッチは遠い血縁関係にあたり、星占いをこよなく愛する、夢見がちで妄想癖ないつもひとりでブツクサ言ってる困ったおっさん。TAKIPAPER研究開発企画部門の顧問キャラクター。

カボちん

KABO-chin

TAKIPAPER総合折衝担当見習い助手。どんなにこんがらがった交渉ごとも、彼女が1本電話を入れるだけであっさり解決しちゃう!的なことを夢見て描かれたキャラクター。

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